こども市政ニュース
文化財をまもる いかす つたえる
郷土資料館 徹底取材

写真: こども市政ニュース広報員の3人

瓦木小学校6年 前川陽香広報員、鳴尾東小学校6年 八杉俊広報員、段上小学校6年 木田和希広報員

西宮では近年、「具足塚古墳」「東六甲石丁場跡」といった文化財が次々と史跡に指定されています。
でも文化財ってどんなものなのでしょうか。今年のこども市政ニュースでは、こども広報員が郷土資料館のお仕事を体験、文化財を守るためにどんな仕事をしているのか紹介します。

【問合せ】広報課(0798・35・3401)

郷土資料館ってどんなとこ?文化財ってなに?
教えて!学芸員さん

写真:郷土資料館 瀬尾学芸員

郷土資料館
瀬尾学芸員

今回の取材では、郷土資料館・学芸員の瀬尾さんに案内してもらいました。
まず実際にお仕事を体験する前に、そもそもの疑問をお聞きします。

郷土資料館ってどんなところ?
画像: 郷土資料館 アクセスマップ

アクセスマップ
資料館は教育文化センター(中央図書館と同じ建物)
に入っています

西宮の歴史や文化を知ることができる博物館です。
博物館という意味では、美術館、動物園、水族館の仲間といえます。

写真:郷土資料館 施設内の様子

西宮の歴史・文化に関する
資料を展示しています

学芸員ってどんなひと?
歴史・美術・生物などを専門とする、博物館で働く人のことです。資料館では考古学・歴史学・民俗学の学芸員が働いています。学芸員の仕事内容は、大きく分けると以下の3つになります。
まもる
文化財が壊れないよう、なくならないように、資料を収集し、適切な環境で保管します
いかす
資料を調査・研究し、その成果を知ってもらうために、展示などで文化財を活用します
つたえる
展示して周知したり、国などの指定を獲得することで、文化財を後世まで伝えていきます
文化財ってどんなもの?

簡単に言ってしまえば「昔の人の生活の中に出てきて、その後も残っているもの」です。文化財保護法により大きく以下の5つに分けられます。西宮には155件の文化財があります。

写真: 高畑町遺跡の井戸

高畑町遺跡の井戸

写真: 鷲林寺の石造七重塔

鷲林寺の石造七重塔

写真: 東六甲石丁場跡

東六甲石丁場跡

写真: 西宮砲台

西宮砲台

有形文化財
建造物、工芸品:西宮神社 表大門他
無形文化財
演劇、工芸技術:名塩和紙の紙すき技術
民俗文化財
衣服、家屋:灘の酒造用具一式
記念物
史跡、動物:満池谷層の植物遺体包含層
伝統的建造物群
宿場町、城下町:西宮にはありません

郷土資料館のお仕事体験 「まもる」
雨のあと、風のあと、崩れてないかな?
文化財をパトロール

写真:木田和希広報員
西宮市内にある史跡や文化財の状態を把握するため、学芸員は定期的にパトロールをしています。
パトロールでは史跡が雨風により被害を受けていないか、文化財説明板が倒れていないかなどを確認し、
今後の対応策についても検討します。
満池谷層の植物遺体包含層(県指定天然記念物)
神原町にある満池谷層は、植物の遺体が含まれる地層が2層あります。ひとつは約50万年前の地層で、寒い地域の植物が含まれていることから、西宮に氷河期があったことがわかります。もうひとつの層は、約30万年前の地層で暖かい地域の植物が含まれているため、現在よりも温暖な気候だったことがわかります。地層を調べることで、昔の気候や自然環境を知ることができます。
写真: 満池谷層の植物遺体包含層

普段は見える地層も、
前日の雨で流れてきた土に隠されていました

写真: 前川陽香広報員

地層の一部は採取して収蔵庫で保管
ガーゼとボンドのようなものを使い、バリっと剥がして採取したんだって!

具足塚(ぐそくづか)古墳(市指定史跡・有形文化財)
写真: 具足塚古墳
高座町の具足塚古墳は、古墳時代(6世紀後半)に造られた直径17メートル、
高さ4メートルの円墳で、市内の古墳では最大級のものです。
※私道を通るため普段は入れません
写真: 八杉俊広報員

この大きな石は、てこの原理を使って丸太で運んだと考えられているんだ

学芸員の眼

写真: 郷土資料館 瀬尾学芸員
出土品には土器だけでなく、アクセサリーや馬具などの高級なものも含まれていました。このことから具足塚古墳には、武庫川下流地域を治めていた一族が埋葬された可能性が高いと考えられます。
西宮神社(表大門・大練塀(おおねりべい))(国指定重要有形文化財)
西宮神社の表大門は、桃山時代に建てられ、江戸時代の慶長9年(1604年)に再建されました。大練塀は全長247メートルの土塀で、室町時代に建造されたと考えられています。土を建材に用いて突き固める、版築技法で造られており、日本三大練塀のひとつに数えられています。
他にも「御社用日記」という216点におよぶ古文書や、天然記念物に指定されている社叢など、西宮神社には文化財が多数あります。神社敷地内にトイレを設置するにあたって発掘調査をした際にも、多数の土器などが出土しました。
写真: 表大門

表大門

写真: 大練塀

大練塀

写真: 木田和希広報員
大練塀の壁がミルフィーユ模様になっているのは、土を何度ものせては叩いて作られたからなんだって。
だから、雨風を受けると少しずつ流れてしまうんだ

郷土資料館のお仕事体験 「まもる」
水から、虫から、温度から、資料を守る
収蔵庫での資料の保管

写真: 八杉俊広報員
資料館で展示している資料はごく一部で、それ以外は地下にある複数の収蔵庫で保管しています。
古文書のように特に保管に注意が必要なものは、温度・湿度を管理して保管しています。
西宮の昔の生活が分かる民具などの保管
写真: 前川陽香広報員
銀行の金庫みたいに分厚い扉は、災害時にも水が入らないようにするためなんだって。虫が入らないよう、網戸もついていたよ
写真: 収蔵庫の扉

分厚い扉の奥には…

写真: 収蔵庫の中の様子

近代まで使われていた道具がたくさん!

西宮神社 社頭遺跡で最近発掘された土器の保管
写真:社頭遺跡で最近発掘された土器

触ると手に土が!器が土にかえりかけているんだって

写真: 木田和希広報員
バラバラの破片は、パズルのように組み合わせて接着剤で修復するんだ。慣れてきたらどの部分のパーツか大体分かるようになるんだって

学芸員の眼

写真: 郷土資料館 瀬尾学芸員
写真の土器は主に室町時代のもので、大量に出土しています。このことから、紙皿のように使い捨てで使われていたと考えられます。

郷土資料館のお仕事体験 「いかす、つたえる」
調査・研究の成果を伝えるために
展示の準備

写真: 前川陽香広報員
学芸員は、調査・研究した成果を多くの人に知ってもらうため、展示などの普及活動に取り組んでいます。
具足塚古墳の展示を11月まで開催中!
具足塚古墳の200点近くある出土品を厳選し、11月25日まで郷土資料館で展示します。こども広報員が手に取って観察し、抱いた疑問をもとに作成したパネルも展示します。ぜひお越しください!
写真: 具足塚古墳の出土品

上段左から、フタと器(上下で1 組)、堤瓶(さげべ)、つぼ、耳飾りやビーズ。
下段左から、馬具の鎖、刀、鉾(ほこ。上)、金具(下)

写真: 出土品を手に取る広報員

材料は何だろう?
なんで古墳に埋めたのかな?

学芸員の眼

写真: 郷土資料館 瀬尾学芸員
 考古学の基本は、「観察し、そこにどういう疑問をもつか」。前情報なしに、何に見えるでしょうか?

指定文化財公開
具足塚古墳出土品

写真: 具足塚古墳出土品 展示の様子

【日時】

11月25日(日曜) までの午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)。月曜休館

【問合せ】郷土資料館(0798・33・1298)

西宮の文化財年表
時代
  • 西宮の文化財
  • 主な出来事
B.C.50万年~30万年頃
  • 満池谷層の植物遺体包含層
旧石器時代 B.C.3万年頃
  • 大陸から現生人類が日本列島にわたる
縄文時代 B.C.11000年またはB.C.13000年頃
  • 土器が使われ始め定住が始まる
弥生時代 B.C.300年頃またはB.C.800年頃
  • 水田稲作が始まる
57年
  • 奴国王、後漢から金印を授かる
古墳時代
  • 具足塚古墳
飛鳥時代 592年
  • 飛鳥に都を置く
646年
  • 大化の改新
奈良時代 710年
  • 平城京へ遷都
  • 高畑町遺跡の井戸
平安時代 794年
  • 平安京へ遷都
鎌倉時代 1192年
  • 源頼朝、征夷大将軍に
南北朝時代
  • 鷲林寺の石造七重塔
室町時代 1338年
  • 足利尊氏、室町幕府を開く
  • 西宮神社 大練塀
1467年
  • 応仁の乱
戦国時代
安土桃山時代 1590年
  • 豊臣秀吉、全国統一
  • 西宮神社 表大門
江戸時代 1603年
  • 徳川家康、江戸幕府を開く
1604年
  • 西宮神社 表大門(再建)
  • 東六甲石丁場跡
1694年(~1875年)
  • 西宮神社 御社用日記
1866年
  • 西宮砲台
1868年
  • 明治維新
近代 1877年
  • 西南戦争
1945年
  • 太平洋戦争が終わる

取材後記

写真: こども市政ニュース広報員の3人
はじめは難しそうな仕事だと思っていましたが、大切で、やりがいのある仕事だと感じました。自分たちが住んでいる西宮に、古いすごいところがあることを皆さんにも知ってほしいです。 
写真: 郷土資料館 瀬尾学芸員
西宮は今も地中に多くの遺跡が眠っており、私はこのまちに歴史のロマンを感じています。皆さんの足元に、数千年の昔から続く人々の営みが残っていることに、ぜひ思いをはせてみてください。

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