多文化共生社会を考える
顔の見えるつながりが育む多文化共生
同志社女子大学特任教授 藤原 孝章

最近、サッカーや陸上の日本代表、芸能タレントなどで、国際結婚の家庭に生まれた人たちの活躍を目にします。サッカーや野球のように生活や仕事の場が海外にある日本人選手も多くなっています。一方で、規制する法律ができたとはいえ、今なお特定の民族出身の人々に対して差別的で心ない言葉を投げつけるヘイトスピーチもみられます。

国会では外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法案が可決されましたが、すでに日本社会はおよそ50人に1人の割合で外国人が暮らす多文化社会になっています。外国人が多く住む市町村も増えてきました。大阪市、神戸市など旧来から多文化が共生する地域は言うまでもなく、最近は八尾市、湖南市、豊田市、浜松市、北海道のニセコなど多文化が進む地域が日本各地に増えています。どの地域も行政のみならず、国際交流センター、NGOなどが協力して日本語教室、災害時の対応も含めた多言語情報の提供などさまざまな取組をしています。そのような地域を訪問してみて私が一番に感じることは、各地域でキーパーソンとなる外国人や外国にルーツがある人々と、地域で国際交流を担う人々が、顔の見える関係を築いていることです。

日本に暮らす外国人は、「外国人人材」ではありません。それぞれに言葉や文化を持つ、顔がある住民です。学校に行く子供もいるし、体を悪くすれば病院にも行きます。地震などの災害時には被災する可能性もあります。私たちと同様、暮らしのレベルでは何ら変わりません。とはいえ、労働の対価が正当に支払われなかったり、日本語の教育が十分に受けられなかったり、わかりやすい日本語でのコミュニケーションを必要とする人もいます。人権の視点から見れば、多数派と少数派の関係の中で暮らしにくさを感じている人がたくさんいます。そんな中で国際結婚の家庭に生まれた子供たちはハーフ(半分)ではなくダブル(二倍)であり、ミックス(マルチ)の良さを持っています。

多文化共生とは、言葉や文化が異なる人々が普段の顔が見える関係づくりのなかでさまざまな楽しさや苦しみも互いに共有していくことではないでしょうか。

【問合せ】秘書課(0798 ・35 ・3459)

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