多文化共生を考える
『人権文化の花咲くまち 西宮』を目指して多様な視点から学ぼう!
旅列車の車窓から ~多様な人生景色
あなたは今、旅列車に乗っている。
ここは新潟県、窓の外には田園風景が広がる。見慣れない国旗が見える。アフリカ東南部にある「マラウイ共和国」の旗だ。ここはアフリカのパンを食べることができるお店。中に入ると、緑・黄・赤色が入った鮮やかな帽子をかぶり、カラフルなマスクをしたアフリカ系の男性がいた。
彼はトーゴ共和国という西アフリカの国から来日したそうだ。現地を訪れていた日本人女性と出会い、結婚し、この日本へやってきた。
そして今。彼は独特の風味と食感があるアフリカのパンに魅せられた店のオーナーである女性と一緒にパンを焼いている。
出会いの連鎖反応が生み出した奇跡。
旅列車はさらに進む。
窓の外にはインドカレー屋が見える。店内では日本人の夫、台湾人の妻、そして2人の娘たちが食事をしていた。イギリス留学中に出会った夫婦は、妻の祖国である台湾での生活を経て、今は夫の職場のある新潟に住んでいる。日本語や台湾語が混ざった家族の会話に店のオーナーのインド人男性が加わる。「おっ、今日も元気そうだな〜!」彼が加わってからは、英語も混ざり始める。夫婦の娘たちを幼い頃から知っているオーナーだから親戚のように会話が弾む。娘たちは英語をある程度理解しているようだ。言語能力や柔軟性は環境が育てると実感できる景色。
次に車窓から見えたのは、新潟駅から徒歩10分の場所にあるバー。バーカウンターの内側にはカクテルをシェイクする1人の青年の姿が。彼はウクライナ人だ。日本語が上手なので、日本生活が長いのかと思いきやロシアとウクライナの戦争の難民として、家族ともども日本へ逃れてきたという。数年前は日本に来ることなど想像もしていなかっただろう。1年ほどの勉強で身につけた日本語を話し、地元の青年たちと一緒にバーで働いている彼の姿。予測不可能な人生に、人々が適応し、協力しながら生きている姿に希望の光を見た。
旅列車の車窓から見る人々の多様な人生。走り続ける旅列車の次の車窓からは、あなたの街の人生景色が映るかもしれない。
漫画家・タレント
星野 ルネさん
1984年カメルーン生まれ。4歳の時に母の結婚に伴い来日し、姫路市で育つ。ツイッター上で発表していた自分の日常のエッセイ漫画が話題となり2018年8月に『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』(毎日新聞出版)として出版。毎日小学生新聞にて「アフリカ少年!毎日が冒険」連載中
【問合せ】秘書課(0798・35・3459)