多文化共生社会を考える
「ちがいを豊かさに」 大手前大学非常勤講師 岩山 仁
私たちが日々を生きる中で、誰とでも和やかに打ち解けた関係がつくれたら、とても平和な世の中になるのだろうと思いますが、そもそもそれが難しいと感じることもあるかもしれませんね。
たとえば、何かの会合などで、初めて会う人、しかも、服装などの雰囲気が自分とは合わないように感じる人と隣の席になったとき、すぐに和やかに話をするという雰囲気にはなりにくいかもしれません。
ところが、はじめはお互いよそよそしかったのが、ちょっとあいさつし、話をしてみたら、何かのきっかけで、急に話が盛り上がったり、親しくなったという経験はないでしょうか?
そのきっかけはほとんどの場合、共通の知人がいるとか、共通の趣味があるとか、お互いの「共通点」を見つけたことだと思います。人間は本能的に、自分と「共通点」があると親近感や安心感を抱くようになっています。ですから、お互いの「共通点」を見つけた時、急に打ち解けたり、話が弾んだりするのです。
しかし、その逆もまた真なり、とも言えます。人は誰かに自分との相違点を見つけたとき、無意識のうちに警戒心を抱いたり不安感を覚えたりすることがあります。その結果、硬い表情になってしまったり、無意識に自分を守ろうとして、相手に対して威圧的な態度になったり、必要以上に低姿勢になったりしてしまうことになるのです。それがさらに悪い方向に向かうと、その相手を避けたり、排除しようとしたり、差別的な態度をとったりすることになってしまいます。
では、お互いに「ちがい」があると、良好な関係をつくるのは難しいのでしょうか?
別の視点から人間を見てみると、同じことばかりでは「退屈」してしまい、日々目新しいことやいつもとは違う楽しさなどを求める性質もあります。たいていの人が、余暇には旅行や買い物に出かけたり、テレビを観たり本を読んだりすることも、ある意味で「ちがい」を求めているということでもあります。つまり、同じ「ちがい」でも、それを受け止める人の意識によって、不安や障害になることもあれば、楽しみや豊かさにすることもできるということです。
「ちがい」を受け入れるということは、それまで自分が無意識につくってきた「ガード」を外すことでもあるので、初めは少し勇気がいるかもしれませんが、それが自分の世界を広げることにもつながります。そして、その上で、お互いに、幸せに暮らしたいという大切な「共通点」を改めて認識することによって、平和な世の中をつくっていくことができるのではないでしょうか。
2月23日(日)に開催される「西宮国際交流デー」は、最初の一歩を踏み出すのに絶好の機会です。韓国や中国をはじめとする民族の音楽に触れ、イギリス人の英語落語を聴くうちに、自分の「ガード」が少しずつ下がっていくことに気づかされるはずです。ぜひご参加いただき、「ちがい」を楽しんでください!