『第18回 西宮洋菓子園遊会』(後編) 本番レポート。西宮のスイーツやパティシエが、より近くに感じられた一日となりました。
更新日:2017年11月24日
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第18回洋菓子園遊会本番です
いよいよ『スイーツライブ』の開演です。
11月7日、西宮北口にある兵庫栄養調理製菓専門学校の新校舎には、抽選倍率約30倍の中から当選されたスイーツ好きのみなさんが続々と来場。12時半からの部と15時からの部の2回に分けて、いよいよ『第18回 西宮洋菓子園遊会』の本番、『スイーツライブ』が幕をあけました。
兵庫栄養調理製菓専門学校
テーマ決めから本番直前までの様子は、『第18回西宮洋菓子園遊会』(前編)でレポートしていますので、そちらもご覧下さい。
はじめに、実行委員長のパティシエ エイジ・ニッタの新田英資さんから、「スイーツはもちろんのこと、音響から進行、サービスまですべて手作り。いたらぬところもあると思いますが、楽しんで下さい」との挨拶。
実行委員長のパティシエ エイジ・ニッタの新田英資さん
その直後、BGMが変わったと思ったら突然、「Ladies' and Gentleman~」と、DJアナウンス。DJの主は、ケーキハウス ベルンの倉本洋一さんで、流暢な英語を披露。パティシエ全員の「ウィ シェフ!」との掛け声に、お客さんは思わず拍手です。筆者の英語力のなさで何を言っていたのかが聞き取れなかったのですが、みなさんの意気込みが伝わる素敵なオープニングでした。
ケーキハウス ベルンの倉本洋一さん
そして、待ちに待ったスイーツが運ばれて来ます。1皿目は『4種のプチフール』。洋菓子園遊会といえば、西宮のスイーツがコース仕立てで提供され、言わばこちらはオードブル。「最初なのですべてを小ぶりに。酸味や甘みのバランスを考え、口の中をスイーツモードに変えて、次につながるように」と、4人のパティシエの作品が、一度に味わえるひと皿です。
『4種のプチフール』
お皿の右手前から時計まわりに、
フランス産のチーズを使ったレアチーズケーキ『フロマージュ・オン・レザン』(西北菓子工房 シェ イノウエ)
ウィーンの伝統菓子を木苺(フランボワ)を使って、よりさっぱり仕上げた『木苺のプチクランツ』(リベロ洋菓子店)
和歌山産のグリーンレモンを使った『レモンなタルト』(ベルサ洋菓子工房)
全パーツをチョコレートで作った黒いシュークリーム『シュー・クロカン オ ショコラ』(パティスリー ラ・バニーユ)
その場でキッチンから運ばれてきます
運ばれるスイーツを紹介しながら進行するエルベランの柿田衛二さんが、それぞれの作品を担当したパティシエさんに呼びかけ、詳しい解説を求めるシーンも。作業をしているオープンキッチンからひょいと顔を出して応える姿が、何とも微笑ましい光景でした。
司会進行のエルベランの柿田衛二さん
各お皿の担当パティシエがスイーツの説明をその場で行います
これらのプチフールは、今後、店頭に並ぶ可能性も高いとか。洋菓子園遊会に来られなかった方にも朗報ですね。
例年以上にパティシエとの距離が近い!
今回の会場は、昨年までのホテルとは違い、オープンキッチンなので、てきぱきと動くパティシエのみなさんの動きや音、そしてよい香りが、客席まで漂ってきます。
参加協力店のスタッフがサーブをお手伝いしていました
客席は、大きなガラスの壁から太陽の光が明るく降り注ぎ、客席どうしの距離も近く、話しやすいカジュアルな雰囲気を生み出していたようです。
「美味しい!」「あっ私、これ好き」「僕はこっちやな」など、お客さんの声や表情までもがダイレクトに伝わるのが、「新鮮だったー」とパティシエのみなさんもおっしゃっていました。
大きなガラスの壁面からは太陽の光が降り注ぎます
また会場では、今回初の試みも。ベルサ洋菓子店の福原良樹さんと、パティスリー ジャンティーユの末廣靖通さんによる、ウェディングケーキのデコレーション実演です。
ベルサ洋菓子店の福原良樹さん
パティスリー ジャンティーユの末廣靖通さん
3段のケーキに、一段一段、装飾していきます。「エレガント&ゴージャス」が今回のテーマというお二人。粉砂糖と卵白を練り合わせクリーム状にしたロイヤルアイシングを、ひょいひょいひょいと絞りだすと、見る見る間に、ケーキが美しい模様に彩られていきます。
可愛いウェディング姿のお人形も!
ウェディングケーキは、ロイヤルアイシングより粘度のあるシュガーペーストで作ったバラの花とカラフルなマカロンを盛り付け、完成。カワイイーっ。先月行われたシミュレーション会の時より、よりインスタ映えする作品になっていたのを、筆者は見逃しませんよ。
シミュレーション会よりさらに華やかさがグレードアップ!
「ウェディングケーキを作るのを間近で見るのは始めてです」と目を輝かせていたのは、枚方市からお越しの嫁姑。西宮出身のお嫁さんが洋菓子園遊会のことを知っていて、スイーツ好きなお姑さんの為に応募されたのだそう。「すぐそばにパティシエさんがいらっしゃったり、何だか夢のようで。連れてきてもらえて幸せ」と、お義母さま。ウェディングケーキを前に、結婚式を思い出されたのでしょうか。「完成したら、一緒に写真をとりましょう」など、ふたりで仲良くお話をされていました。
お二人の記念写真をぱしゃりと頂きました
インスタ映えする作品が続々と
今年の流行語大賞にもノミネートされた"インスタ映え"。会場のお客さんのほぼほぼ全員が、運ばれる皿ごとに「うわ~」と歓声をあげると同時に、携帯を手に取りカシャリ、カシャリ。熱心に写メを撮られていた方にお話を聞くと、「今年の園遊会は、写真に撮りたくなるスイーツばかり。アツアツを早く食べたいのに~」と、うれしい悲鳴。
ついカシャリと撮影したくなります
過去にも当選して参加しているという、西宮在住のママ友ふたり組。ウェディングケーキの実演は、動画でも撮られたとのこと。「今年はパティシエさんとの距離がほんとに近いし、撮りがいもあるし、ボリュームもあるし」と、ホテルではないカジュアルさもあり、より楽しまれたそうです。
洋菓子園遊会に過去にも参加!
スイーツをコース仕立てで提供する洋菓子園遊会のメインとなるのが、アシェットデセール。お皿の上に、自由にパティシエのセンスで技術を発揮する皿盛りデザートのことで、作りたてをその場でいただく、持ち帰りが困難なスイーツです。洋菓子園遊会では、ひと皿に2店舗以上の作品が融合される、他では絶対にあり得ないもの。今年は『秋』『チョコレート』『クリスマス』をテーマにしたアシェットデセールが3皿。しかも、厨房から客席の距離が近いだけではなく、熱いものはより熱いまま、冷たいものはより冷たいままでひと皿に盛り付ける、まさに"スイーツライブ"です。
まずアシェットデセール1皿目は『秋』。
焼き立ての洋菓子に冷たいアイスが添えられた『紅玉リンゴのタルトタタン キャラメルバニラアイス添え』と、リンゴに合う『アールグレイとノワゼットのムース』です。
アシェットデセール『秋』
リンゴや洋梨に合う、風味豊かなアールグレイ紅茶のムースと、優しい香りのヘーゼルナッツのムースとダックワーズを組み合わせた『アールグレイとノワゼットのムース』(ケーキハウス ベルン)
長野県のリンゴ農家直送の酸味を効かせた『紅玉リンゴのタルトタタン』と、リンゴの風味をさらに広げる『キャラメルバニラアイス添え』(パティシエ エイジ・ニッタ)
アシェットデセール2皿目は絶妙なタイミングで焼き上げた『フォンダンショコラ』と、チョコに合う抹茶で作った冷え冷えの『宇治抹茶ブリュレ』です。
アシェットデセール『チョコレート』
「シミュレーション会ではやわらかすぎたので、1週間毎日試作をした」とパティシエの池田政介さん渾身の『フォンダンショコラ』(ケーキハウス ツマガリ)
お互いの邪魔をしないチョコレートから導きだした、ホワイトチョコでコーティングされた『宇治抹茶ブリュレ』(ドイツ菓子&カフェ カーベ・カイザー)
それぞれに計算つくされた組合せに、西宮のスイーツのレベルの高さを感じられずにいられない作品です。
スイーツコースならではの工夫を
今年の西宮洋菓子園遊会に登場したのは、7皿14作品。参加されたことがない方から、「スイーツをコースで?嬉しいけど、飽きませんか?」などと言う声を聞いたことがあります。そんな心配はご無用。コース料理と同じで、緩急を考えたり、口の中をリセットするものを挟んだりと、流れを組み立てるように、スイーツのコースにも工夫が凝らされているのです。
今年でいうならば、ボリュームのあるアシェットデセールの皿と皿の間に登場した、たこ焼きとサンドイッチ。あっ、たこ焼きではありませんでした。パティスリー アトリエ・タケの竹中広明さんの遊び心で焼き上げた、たこ焼きの形をした『彩り野菜のケーク・サレ』。ケーク・サレとは仏語で"しょっぱいお菓子"の意味。甘い、甘いが続くので、口の中を塩味でリセットさせるために、プチフールの1種としての登場です。
パティスリー アトリエ・タケ『彩り野菜のケーク・サレ』
「どれも美味しかったんですが、印象に残ったのは、たこ焼き(では、ないですが)とサンドイッチ。おかげで、今回は完食できました」と、お昼を抜いて15時からの部に参戦したという、2回目参加の西宮市在住のご夫妻も。『スモークドサーモンのサンドイッチ』のパンを、洋菓子店の林田伸生さんが焼いたものと知り、「買いに行きます」ともおっしゃっていました。ちなみに、おそらく日本一、焼き上がるのが遅いパンで、午後4時すぎからの販売だそうです。
ライト洋菓子店『スモークドサーモンのサンドイッチ』
BGMがクリスマスソングに変わり、いよいよ6皿目。最後のアシェットデセールの登場です。よりいっそうの歓声が上がる、見た目もかわいらしいひと皿。時間が立つとクリームが絞まるので、出来立て、絞りたてしか味わえない食感のモンブランをはじめ、「サンタのいるケーキには、卵の器に入った丹波栗のポタージュをかけて下さい」など、まさに今、ここの会場でしか味わえないライブ感満載。最後まで飽きさせない、一品一品が凝っているひと皿です。
アシェットデセール『クリスマス』
お皿の真ん中が、
イタリアマロンとフランスマロンを使い、あっさりと仕上げた出来立ての『クリスマスモンブラン』(パティスリー ジャンティーユ)
奥が、
ホワイトチョコやリヴァーブ(西洋フキ、ダイオウ)のコンポートなどを添えた『ドゥース ショコラ ブラン』(GIVERNY)
手前が、
温かい丹波栗のポタージュをかけて完成する、『NYチーズケーキ スイーツライブ風 丹波栗のポタージュソース添え』(エルベラン)
画面越しでも華やかなアシェットデセール
「お腹いっぱい。でも、ここでしか食べられないんですよね?がんばります!」と、今回初参加の女性。さすがのスイーツ好きのみなさんの中にも、完食するのに苦労された方もいたようです。
ですが7皿目のショコラティエール デリス モアの『ヤウルト柚子ブラン』はお腹がいっぱいな方でも食べられるように小さなコーヒーカップ型のチョコレートに仕立て上げていますよ。
ショコラティエール デリス モア『ヤウルト柚子ブラン』
20回30回と続くために
「いやぁ、ついつい張り切りすぎちゃうんですよね。僕たちも洋菓子園遊会となると」と、シェ・イノウエの井上成大さん。
シェ・イノウエの井上成大さん
「そんな思いを毎回感じているから、また参加したくなるんです」と、過去にも参加したことのあるママ友さんたちはおっしゃっていました。
「この会が20回も30回も続くように、西宮の洋菓子店のパティシエ一同、これからも力を合わせてがんばります」と、ケーキハウス ツマガリの池田政介さんの未来につながる閉会の挨拶で、『第18回西宮洋菓子園遊会』は、幕を閉じました。
最後にパティシエの皆さんで記念写真!でも一人足りません......
シェ・イノウエの井上さんはお客様のお見送りした後、一階で片付けをされていました。
記念撮影でも全員集まらないのが当日のライブ感です。
パティシエとパティシエの、そして、西宮の洋菓子が好きなみなさんが、より近くなった、甘い秋の一日。まだ参加されたことのない方、また参加されたい方は、是非来年度をお楽しみに。
中原 明子(フリーフードライター)
調理師、きき酒師。あまから両刀で、「まちたび西宮」では、スイーツツアーのガイドを担当。
NISHINOMIYA COMMONS編集部
フリーフードライター中原明子
兵庫栄養調理製菓専門学校のマーカーリスト