多文化共生を考える
『人権文化の花咲くまち 西宮』を目指して多様な視点から学ぼう!
「やさしい日本語」でのコミュニケーションのすすめ
日本語教育支援グループ「ことのは」理事長 矢谷久美子 さん
私は日本語教師です。この仕事を始めたころ、「日本語教師」という職業はまだあまり認知されていなくて、「国語の先生ですか」と確認されることもしばしばありました。「日本語教師は外国人に日本語を教える仕事です」そう説明すると、「では、英語が堪能なんですね」とよく言われました。実は、私は英語を巧みに操って、日本語指導をしたことが一度もありませんし、できません。教室では「やさしい日本語」を使ってコミュニケーションをとっています。「やさしい日本語」とは、相手に配慮した分かりやすい日本語のことです。勉強し始めた人たちが不安なく理解できるよう、ゆっくり、はっきり、短い文で話します。
「やさしい日本語」のエピソードを1つご紹介します。歯科医院で受付の手伝いをしていたときのことです。ある外国人の患者さんに次回治療費を多めに準備する必要があることを伝えなければなりませんでした。診察室で先生は治療内容やそれに費用がかかることを丁寧に伝えていたのですが、患者さんは首をかしげ理解できない様子でした。そこで、私が呼ばれたのです。私は、患者さんの目を見て、「来週、1万円、持って来ます。お願いします」とゆっくり伝えました。患者さんは、すぐに理解して「はい」と返事をし、その場にいた全員がホッとして笑顔になりました。先生は「それでいいのか…」と目を丸くしていました。
西宮市の外国人住民は約8割がアジア出身です。つまり、英語はみんなが分かる言語とは言いきれない状況です。それに、日本語を勉強している人たちは、できるだけ日本語を理解したいと思っています。コミュニケーションの機会があれば、日本語で話したいのです。「やさしい日本語」はそれが実践できるツールです。いくつかコツがありますが、一番大切なのは相手のことを思って話すことです。また、言葉だけに頼らず、ジェスチャーや表情、文字や絵、時には実物を示して伝えます。そして「やさしい日本語」は外国人とのコミュニケーションのためだけではなく、日本人同士でも有効です。
「優しい」気持ちで「易しい」言葉で伝え合う「やさしい日本語」でのコミュニケーションを皆さんも実践してみてください。
【問合せ】秘書課(0798・35・3459)