第18回 「続・療育について」(令和元年10月)
更新日:2019年11月28日
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本コラムの第3回で療育についてお話しましたが、
今回は療育の意義についてとライフステージごとの考え方についてお話したいと思います。
こども未来センター診療所では担当医の指示のもと、
お子さんの発達状態に応じて様々な療育(理学療法、作業療法、言語療法)を実施しています。
ところで、「療育」ということば。
「治療」と「教育」の半々の文字をとっていますね。
治すことと育てることと、両義的なことばと言えます。
私見ですが、療育の目的とは
・放っておくと状態が悪くなる可能性があるものを改善させること
・「その子らしさ」が100%発揮できるよう育てること、という2点が挙げられると思っています。
例えば脳性麻痺などで身体障害があるお子さんの場合、
(1)理学療法でストレッチや歩行訓練をすること
(2)残存機能を駆使し装具等も利用して生活の質を充実させること
が目的となります。
発達障害の子どもへの療育についても、基本的な考え方は同じです。
生まれ持った発達特性を訓練で「治療する(無くす)」ということはしません。
まずは特性にしっかり向き合い理解することが重要です。
療育場面ではこどもへのアプローチはもちろんのこと、支援者(親、教員など)に特性への理解を促します。
その上で、ひとりひとりの子どもにとって適切な対応や工夫を実践していきます。
ライフステージごとに療育の意義は変化していきます。
一般的に乳幼児期は上述の目的(1)の比重がやや高い時期です。
この時期は生涯にわたる「生きる力」の基本を身につけるため、個別療育を比較的高頻度で行います。
身の回り動作の自立や、基本的なコミュニケーションスキルなどが主たるテーマになります。
この時期の療育は個別で行い、子どもが楽しんで取組めることを基本としていますので、
家庭でも生活の中で無理なく実践できることがたくさんあります。
「比較的高頻度」と書きましたが、センターで実施する療育は月2回くらいです。
家庭で日々楽しみながら療育的関わりを実践することで子どもへの理解もより深まります。
小学校に就学以降の子どもについては、目的(2)が重要になってきます。
この時期の療育は、
家庭生活における指導から集団生活が円滑にすすむことを主目的にした指導へ移行していきます。
「主たる集団生活の場=学校」の環境や過ごし方が重要です。
学校が目的(2)に適った環境であることが理想的です。
通院して受ける療育はごく限られた回数(月1回くらい)なので、
学校の先生方との連携を重視した支援を取り入れます。
(次回のコラムで具体的にお話する予定です)
尚、小集団で行うタイプの療育は学童期に有用なことがあります。
同年代の子どもたちが大人の見守り・指導の下、コミュニケーションや対人スキルを学ぶと同時に、
「自分を知る」という経験にもなります。
このように、子どもの成長とともに療育の目的・意義は変化していきますので、
定期診察のたびに新たな療育計画を立てます。
医療機関に通院しての療育が卒業となる目安は、
普段の生活環境(家庭・学校)において目的(1)、(2)が意識され実践されていると確認できた時です。
今回は療育の考え方について主にお話しました。
子どものライフステージごとに目的(1)、(2)が実現できるよう、
こども未来センターでは、通院いただいての個別療育以外にも様々な取り組みを行っています。
次回はその内容についてお話したいと思います。