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第27回「発達障害に対する薬物治療について」(令和2年9月)

更新日:2020年10月2日

ページ番号:70596522

今回は発達障害診療で用いる薬物治療についてご説明します。
 
私個人の思いとしては薬物治療はしなくて済むのであればそれに越したことはないと考えていますが、
発達特性のために本人に大きく不利益が生じている場合、
親御さん・本人と相談のうえ薬物を処方することがあります。
 
薬物治療を検討する際、まずは子どもが過ごす環境や周囲の関わり方などをチェックし、
改善できることがあればそちらを優先します。
 
このように環境や対応方法を改善していくことを「心理社会的治療」と呼びます。
適切な心理社会的治療を第一に試み経過をみます。徐々に成果がみられるようであれば薬物治療は不要です。
経過観察後も困りごとが改善しない場合は薬物治療を検討することになります。
 
現在、わが国で小児に承認されている発達障害関連のお薬は、
  
 ・注意欠如多動症(ADHD)の多動・不注意症状に対する薬
 ・自閉スペクトラム症(ASD)の易興奮性・イライラや不安に対する薬
 ・睡眠障害に対する薬
 
などが代表的です。
飲み方や効き方、副作用の注意等についてお医者さんから十分説明を受けてください。
心配な事があれば遠慮なく申し出てください。
 
例えば、授業中の立ち歩きなどの多動症状がある子の場合、
まずは集中しやすい教室環境づくりやこまめな声かけ、離席する際のルールを決める、
など対応を工夫します(心理社会的治療)。
 
心理社会的治療後も多動症状がいまひとつ改善しない場合、薬物治療が選択肢に挙がります。
ここから内服するか否かを決める際に大切な事は「本人に困り感があるか」です。
「座っていたいけどどうしても無理なんだ」「どうせみんなみたいにはできない自分なんて」
と自己肯定感が下がっている場合、薬物治療によって「自分は大丈夫だ」と思えるようサポートします。
 
「落ち着いてほしい」という親や教師の要望に応えるためにお薬があるわけではないことに注意してください。
ただしあまりに多動衝動性が高く周囲に著しく影響を及ぼしているが、
本人に自覚する余裕すらないと判断した場合は処方することがあります。
この場合も前向きに内服してもらえるよう、できるだけ丁寧に本人へ説明します。
 
親御さんからは、薬物治療をはじめると一生やめられないのではないか?とご質問いただくことがあります。
 
心理社会的対応と薬物治療を併用し、
適切な支援の下過ごされた子ども達は年齢とともに成長し落ち着いてきます。
また、自分の特性を冷静に自覚できるようになります。
 
自力で多動性をコントロールできるようになれば、薬物治療は終了、
もしくは必要な時だけ飲むなどの使い方ができます。
 
お薬で効果がみられた場合も、心理社会的治療を続けることが大切です。
内服期間中に適切な環境下で、
成功体験を積むことで自信が生まれひいては内服期間の短縮にもつながるからです。
 
内服治療は一定期間こどものがんばりをサポートする一助となりえますが、
本人が「本物のがんばれるチカラ」を得るには
周囲の環境や対応がなにより重要であることを忘れないようにしてください。
 
次回は自閉スペクトラム症、睡眠障害に対する薬物治療について説明します。
 
※こども未来センター診療所の開所状況はホームページ、
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