第33回 西宮湯川記念賞贈呈式が開催されました
更新日:2019年9月30日
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西宮湯川記念賞の実施内容
平成30年度は、全国から18件の推薦がありました。西宮湯川記念賞選考委員会(委員長:田中貴浩 筑京都大学大学院理学研究科教授)および西宮湯川記念事業運営委員会(委員長:川上則雄 京都大学大学院理学研究科教授)での審査の結果、小林努氏が受賞者に選ばれました。
12月8日(土曜日)13時00分よりフレンテホールにて、記念賞贈呈式が開催されました。会場には多くの市民の皆様にお越しいただき、記念品贈呈のほか、受賞者決定の選考経過報告や、受賞者による受賞研究についての講演などが行われました。
※掲載写真の無断使用を禁じます。
【受賞者】
小林 努(こばやし つとむ)氏
立教大学理学部物理学科 准教授
(受賞者写真の無断使用を禁じます)
【受賞研究】
「最も一般的な単一場インフレーション宇宙論の構築」
【受賞理由】
宇宙初期に起こった空間の加速膨張であるインフレーションにより、宇宙の平坦性や一様性を説明すると同時に構造形成の初期条件を自然に説明するインフレーション宇宙論のパラダイムは、すでに観測的にほぼ実証されたと言える。しかしながら、インフレーションモデルの詳細に関しては未だ明らかでなく、様々なモデルの可能性が存在する。現在、宇宙背景放射の温度や偏光の分布、銀河の3次元的空間分布などの宇宙論的観測が精力的に進められており、インフレーションを起源とする重力波や、ゆらぎの高次相関などが今後観測されることで、より鮮明なインフレーションモデルの描像が得られることが待たれている。
小林氏と共同研究者は、単一のスカラー場からなる場の方程式が時間の2階微分までで表される最も一般的な宇宙モデルを考察し、インフレーションが起こる条件を明らかにするとともに、密度揺らぎや重力波の3点相関などの観測可能量に対する一般公式を導出することに成功した。これらの一般公式により、これまで個別に議論されていた様々なインフレーションモデルを包含するようなモデル空間を連続的に取り扱うことが可能になった。さらに、上記の単一スカラー場モデルの枠組みは1974年にホルンデスキーによって発見されていたが、近年、見かけ上異なる形で再発見され、それらの間の等価性を示す証明を与えたのも小林氏らである。
以上の業績は宇宙論的観測によってインフレーションモデルを絞り込む上での統一的な枠組みを与えるものとして高く評価されている。
第33回西宮湯川記念賞贈呈式リーフレット(PDF:3,050KB)
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